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【浪曲解説】青龍刀権次 ニセ札

浪曲解説

 

青龍刀権次 ニセ札

口演・玉川ぶん福  三味線・青山 理

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背中に「三国志」の英雄、関羽雲長の刺青を背負った権次。

関羽は横浜中華街に行くと、真ん中に関帝廟が祀られているくらい、中国では誰でも知っている豪傑。得意な武器は青龍刀で、愛馬は赤兎馬。

関羽の刺青があるところかから、青龍刀権次が仇名の男が主役だが、どれだけ凄い奴かと思ったら、これがちっとも凄くない。ただの小悪党。しかも幕末から明治という時代の流れについてゆけずに右往左往する、面白キャラクターの変な奴だ。

 

 

【あらすじ】 

幕末(慶応1年の暮れ)に武士が芸妓を斬るところを目撃した権次は武士を強請るが、何故か現われた捕吏に捕われて伝馬町の牢屋敷に入れられる。出所したのが明治5年、世の中が変わってしまって、頼る人もいない。仕方なく料理屋で皿洗いをしていると、芸妓を斬った武士が立派な紳士となって現われる。権次はふたたび紳士を強請ると、口止め料に千円くれると言い、手付けに二十円の札をもらう。それを持って吉原へ行く権次だが、紳士にもらった札で支払いをすると巡査が現われ捕縛される。札は贋札、紳士が何者かは知らない権次は贋札犯の共犯として市谷監獄に収監される。

 

 

玉川福太郎】 

10年前に死んだ浪曲師、玉川福太郎の得意ネタで、ぶん福、太福ら弟子がしっかり受け継いでいる。

福太郎は、浪曲をわかりやすく、面白くやりたいといつも言っていた。新作もよく掛けた。英雄豪傑の物語だけでなく、ちょっと間抜けな人物の、おかし味のあるネタをやりたい。そんな福太郎に、ぴったりのキャラクターが青龍刀権次だった。

 

 

贋札事件

江戸時代は金、銀、銭が流通し、それぞれが変動相場で動いているという、だいたいの目安はあるが不安定な貨幣制度だった。明治になり、政府は国家単位で貨幣を統一することを試みた。「円」の登場である。

慶応4年(1868)には貨幣司を設け、信頼ある貨幣の鋳造に乗り出し、明治2年(1869)には貨幣司を廃し、造幣局を設立した。明治4年(1971)には「新貨条例」を発布、貨幣の単位を「円」と定めた。金1.5gを1円とし、旧1両を1円と交換できることとし、50銭銀貨などの補助硬貨を鋳造、しかし、外国との取引などで銀や金のさまざまな相場があり、「円」の定着は多難な道であったという。

一方、紙幣は明治元年に太政官札が発行されるが、政府に信用はなく下落、明治5年(1872)には国立銀行条例が発布され、全国の国立銀行が札を発行した。これも西南戦争のインフレで増刷されて価値がなくなり、何度も混乱を引き起こした。明治15年(1882)になりようやく、中央銀行発行の紙幣に統一された。

明治初期は、紙幣は流通していたが、かなり曖昧なもので、相場も乱高下し、贋札も横行した。

権次が10円札を見て目を白黒させる様子もわからなくはない。

明治初期には歴史に残る贋札事件も起きている。明治12年(1979)、長州藩の政商、藤田伝三郎らが贋札発行容疑で逮捕されたが、証拠不十分で無罪となった。藤田の後に井上馨がいて、贋札で得た資金が薩長対立における長州側の資金になったとも言われている。

ちなみに藤田伝三郎は丁稚から国家を動かす政商に出世した立志伝の人物、井上馨は若き日に渡英した「英国密航」と、ともに浪曲の題材にも取り上げられている。

 

 

物語のその後】 

明治10年、出所した権次は三度、紳士と会う。紳士は宇津木政之介という悪党で、悪党仲間の爆裂お玉らと、資産家、岡山家の横領を企んでいた。権次は娘と再会、権次の妻子は権次が牢にいる間、岡山氏に助けられていたことを知る。権次は警視庁の高橋刑事に協力し、宇津木一味は逮捕される。権次は改心し、妻子と暮らすこととなった。