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【浪曲解説】太刀山と清香

浪曲解説

 

太刀山と清香

口演・富士路子  2018年10月より五代目 東家三楽を襲名  三味線・伊丹秀敏 

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浪曲には相撲のネタがいつくかある。谷風、小野川、雷電らが活躍する「寛政力士伝」はじめ、「阿武松」「猪名川」「梅ヶ谷」など江戸の話が多い。太刀山は明治時代の力士だけれど、伝説的エピソードが多い。なにせ強い強い。しかも、女にモテてる!

 

 

 

 

【あらすじ】

力士の太刀山が八百長話を持ち掛けられる。太刀山の師匠は事業に失敗して借金があった。対戦相手の常陸山に勝ちを譲れば、師匠の借金を棒引きにしてもいいという話。だが、その裏では莫大な金が動く相撲賭博があった。芸妓の清香は自分の年季を伸ばして、帯や小物を質に入れて金を作り、太刀山に八百長相撲をせず、戦って欲しいと言う。だが常陸山も強い。清香の想いを背に土俵に上がる太刀山はこの勝負に勝てるのか。

裏で暗躍する相撲賭博グループを懲らす勧善懲悪、太刀山を応援する芸妓の心意気と、明治時代を舞台にした新派的な雰囲気の面白さが満載。

 

 

【太刀山】

太刀山峯右衛門(1877~1941)、富山県出身、第22代横綱。

得意技は鉄砲突きで、浪曲にもこのシーンは出て来る。

56連勝の記録を持つ。また、横綱在位中、金星を一つも許してはいない。

 

 

【富士琴路】

「太刀山と清香」は路子の師匠、富士琴路(1932~2009)の十八番。琴路は東京出身。戦前、中条琴路に入門し富士乃高奴を名乗る。戦後も多くの浪曲コンクールで入選し活躍するも、浪曲界の衰退と子育てのため引退。しかし、74年、富士琴路と改めてカムバック。以後、木馬亭の舞台で活動。三味線も弾き、路子はじめ後進の育成に尽力した。

「太刀山と清香」は琴路の熱演が冴えた。芸妓の粋な科白と、相撲場の迫真の節は印象的で今でも覚えている。路子の熱演からも、琴路の芸の息吹が伝わる。

 

 

【相撲と金と八百長と浪曲】

相撲というのは昔から大変な人気で、土俵の上での男の勝負。面白いだけでなく、勝ち負けがはっきりしているので、金が絡むことも多かったのだろう。

今日でも相撲の八百長問題は時々マスコミを騒がす。浪曲、講談のネタでは「谷風の情け相撲」が有名だが、あれは情け相撲であって八百長ではない。横綱が情けを持って勝ちを譲ったのだ。

昨今の八百長は、強いはずの上位力士が、下位力士から星を買い、己の地位保全に走る。そして、金が動く以上、そこに何かもう一つの大きな利権が動く。

しかし、相撲自体が人気で、興行そのものに大きな金が動くわけで、「猪名川」「梅ヶ谷」など、相撲ネタは金が絡むものが多くある。だが、金が絡もうと、描かれるのは男の勝負の世界であり、力士を支える女たちの物語も、清々しい心意気がドラマチックに描かれている。