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【浪曲解説】出世の草鞋

浪曲解説

 

出世の草鞋

口演・国本はる乃 三味線・馬越ノリ子

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浪曲界、若手の活躍がめざましい。

その先陣で走るのが、国本はる乃。小学生の頃から、国本晴美に入門。高校卒業後、木馬亭で修業、2016年に名披露目後は、木馬亭だけでなく、新宿・道楽亭はじめ、さまざまな場所へ活動の輪を広げている。

 

 

 

【あらすじ】

吉松は伊勢屋五平のもとで奉公をするが、五平は吉松に辛く当たる。極寒の日、五平は吉松だけを何度も水汲みに行かせる。皸だらけになった手で、井戸の釣瓶の縄を握りじっと耐える吉松、六年が経つ。辛抱の糸がある日切れ、吉松は井戸に身を投げようとするが…。

 

 

【国本晴美と国本武春】

はる乃の師匠は国本晴美。1937年東京都出身。49年初舞台を踏み、61年、国本春美を名乗った。活動拠点を千葉の成田に置き、76年から木馬亭にも出演。得意ネタは「真柄のお秀」「秋色桜」など。いまや浪曲界のレジェンドの一人である。

晴美の息子が、故・国本武春(1960~2015)。東家みさ子に三味線を習い、80年、東家幸楽に入門した。木馬亭で浪曲を研鑽しつつ、弾き語りによる独自のパフォーマンスを編み出し、音楽界でも活躍。テレビドラマや、ミュージカルでブロードウェイの舞台にも立った。浪曲界の牽引役として、メディアでも活躍した武春が若くして惜しまれつつ亡くなったのは記憶に新しい。

はる乃は晴美門下として、小学生の頃より節を学んだ。また、木馬亭に出演するようになってからは、一門ではないが、晴美の息子、武春の薫陶も受けている。次世代の浪曲牽引役として、はる乃への期待は高まっている。

 

 

【出世】

浪曲には立身出世の話がよく出て来る。

明治時代の富国強兵時代には、立身出世というのが庶民の目標の一つであった。

「乃木将軍」のような清廉な軍人が認められて将軍となる話や、「塩原多助」のように努力して財をなす話が好まれた。

国本武春が師匠から最初に習ったネタが「藤田伝三郎」。明治時代の政商で、丁稚奉公から財閥の創始者になる立志伝中の人物の若き日の話で、若手が立志伝の人物にあやかるようにと、立身出世のネタを師匠が選んでくれたという。

はる乃の「出世の草鞋」にもそんな師匠の想いがあるのだろう。

浪曲師にとって出世とはなんだろうか。スターになることか、名人になることか。なんにしろお客様に愛されることが、浪曲師の出世ではないかと思う。